暗号資産の死後放置リスクから家族を守る方法|相続・ウォレット管理の注意点

暗号資産は、パスワードや秘密鍵が分からなければ、どんなに価値があっても取り出せません。

暗号資産は、投資対象や資産の一部として広く浸透しました。

しかし、その一方で「持ち主が亡くなった後、家族がアクセスできずに失われてしまう」──そんなケースが増えています。

あなたの暗号資産は、あなたにしか開けない“金庫”に入っています。

もしパスワードや秘密鍵が分からなければ、どんなに価値があっても取り出せません。


なぜ今、暗号資産の相続が問題になるのか

暗号資産は銀行口座や不動産と違い、紙の証書や通帳のような「形」がありません。

アクセスするためには、以下の情報が必要です。

  • ウォレットのアドレス
  • 秘密鍵(Private Key)
  • 二段階認証コード

この情報を残していなければ、資産があっても存在しなかったことになってしまいます。

実際に、世界的な投資関連のメディア『Investopedia』によると、ビットコインの世界では「所有者が亡くなり、誰も鍵を知らなかったために失われたコイン」が全体の20%ほどに上るとも言われています。

参照:Investopedia~What Happens to Bitcoin After All 21 Million Are Mined?


暗号資産の誤解:「取引所に預けていれば安心」は危険

暗号資産を取引所に預けている場合でも油断はできません。

遺族は、相続時に取引所へ連絡し、死亡証明書や相続人の確認書類を提出する必要があります。

家族が手続きを行わなければ、取引所側も資産を移動できません。

また、自分で管理しているウォレットの場合はさらに注意が必要です。

秘密鍵を紛失すると、誰にも復旧できなくなってしまうからです。

ウォレットは、秘密鍵を紛失すると、誰にも復旧できなくなってしまいます。

放置すると起こる3つのリスク

  1. アクセス不能
    秘密鍵・パスワードが分からず、資産が永遠に取り出せない。
  2. 相続トラブル
    暗号資産の存在を家族が知らず、申告漏れや争いの原因になる。
  3. 税務リスク
    暗号資産も相続税の対象。申告や評価方法を誤ると、後から課税トラブルになる可能性がある。

いまからできる「暗号資産を守る準備」

暗号資産を安全に残すには、「資産の存在」と「アクセス方法」を信頼できる形で家族に伝えることが大切です。

代表的な方法は次の3つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。


紙に書いて保管(ペーパー管理)

メリット

  • ネットに繋がらないため、ハッキングの心配がない。
  • 手軽でコストがかからない。

デメリット

  • 紙の劣化や紛失などの物理的リスクがある。
  • 誰にも見られないよう保管しつつ、いざという時には家族が見つけられるようにする必要がある。
  • 手書きの場合、家族に判別できない場合もある。

ハードウェアウォレット

メリット

  • オフラインで保管できるため、ハッキング耐性が非常に高い。
  • パスワードや秘密鍵を安全に保存できる。

デメリット

  • デバイス自体を紛失・破損すると、資産にアクセスできなくなる。
  • 操作に慣れていない家族が扱えない場合、死後に引き継げない可能性がある。
ハードウェアウォレットはパスワードや秘密鍵を安全に保存できますが、デバイス自体を紛失・破損すると、資産にアクセスできなくなります。

信託・専門サービスの利用

メリット

  • 専門家やシステムに管理を任せることで、死後も安全に資産を引き渡せる。
  • 法的な枠組みの中で管理されるため、トラブル時も対応がしやすい。

デメリット

  • 年間手数料や契約コストがかかる場合がある(資産額の0.4〜0.6%程度が目安)。
  • 信託先やサービス提供者の信頼性を見極める必要がある。

その他に新しい選択肢としては、死後に大事な情報を家族にわたせる終活アプリを利用する方法もあります。

死後に大事をわたせるアプリ


まとめ

暗号資産は未来の資産です。

けれど、その未来を家族につなぐには、今のうちに準備をしておくことが欠かせません。

自分の大切な資産を安全に残すこと。

それが家族への最後の思いやりになるのです。

暗号資産を安全に残すことは、家族への最期の思いやりになります。

監修した人:山本円佳さん(ファイナンシャルプランナー)