デジタル終活の第一歩:デジタル遺品チェックリストの作り方

スマートフォンやパソコンの中には、私たちの暮らしのほとんどが詰まっています。
ネット銀行の口座、クラウドの写真、SNS、通販履歴──どれも身近で便利ですが、もし自分に何かあったとき、それらの情報を家族がどう扱えばいいのか、考えたことはあるでしょうか。
近年、「デジタル遺品」に関するトラブルが増えています。
スマホのロックが解除できない、ネット口座の存在がわからず相続が滞る、SNSがそのまま残ってしまう──。
多くは、情報が本人の中だけに留まっていたことが原因です。
このような事態を防ぐために必要なのが、「デジタル遺品チェックリスト」 です。
どんなデータが、どこに、どのように保管されているのかを整理し、家族や信頼できる人に伝えるための道しるべになります。
この記事では、チェックリストの必要性から実際のトラブル例、作り方と活用のタイミングまで、順を追ってわかりやすく解説します。
目次
1.なぜ「デジタル遺品チェックリスト」が必要なのか
銀行口座や不動産と同じように、スマートフォンやクラウド上のデータも“遺産”です。
しかし、紙の通帳や鍵のように「見える形」で残っていないため、家族は故人がどんなアカウントを持っていたのか、なにをすればいいのかわからない――これが現実です。
近年では、
- SNSのアカウントが放置されてトラブルになった
- ネット銀行や証券口座に気づかず、資産が引き出せなかった
- スマホのロックが解けず、家族の写真や思い出が失われた
という事例が増えています。
このような混乱を防ぐためには「デジタル遺品チェックリスト」が必要なのです。

2.チェックリストがない場合に起こるトラブル実例
スマホのロックが解けず、写真も思い出も取り出せない
Aさん(58歳)は、家族との写真や動画をスマホに保存して、クラウドで自動バックアップしていました。
ですが、クラウドへログインするIDとパスワードを誰にも伝えていませんでした。
Aさんが突然の体調悪化で亡くなったあと、家族はスマホのロックを解除できず、中のデータにもクラウドにもアクセスできませんでした。
思い出の写真が残っているはずなのに、もう二度と見られなくなりました。
📌 ポイント:
「スマホのロック解除情報」「クラウドのログイン方法」を最低限でも記録しておくことが大切です。
ネット銀行や証券口座の存在がわからず、相続が滞った
Bさん(62歳)は定年後、ネット銀行やネット証券を利用していました。
便利さから複数の口座を開設していましたが、紙の通帳はありませんでした。
Bさんが亡くなったあと、家族が相続の手続きを進める中で、「ネット上に資産が残っているのでは?」と気づきましたが、取引銀行さえわかりません。
調査に半年以上かかってようやく一部の口座を見つけました。
しかし、解約や相続に時間がかかった上に「ほかにまだ口座があるのでは?」という思いをいつまでも背負うことになりました。
📌 ポイント:
デジタル資産は“見えない財産”。
口座情報やログイン方法をチェックリストにまとめ、家族がスムーズに把握できるようにしておくことが重要です。
SNSが残り続け、友人が困惑
Cさん(46歳)は生前、SNSで日々の出来事を発信していました。
Cさんが亡くなったあと、誕生日のお知らせや「思い出投稿」の通知を友達は受取り、複雑な気持ちでした。
家族も削除の仕方がわからず、長期間アカウントが残ったままになっていたからです。
一部のSNSは、家族が削除するには、故人のアカウントへのログイン情報が必要となります。

📌 ポイント:
SNSやオンラインサービスの“アカウント処理方針”をあらかじめ確認しておき、どうするかを決めておくことが、残された人への優しさにつながります。
この3つのケースに共通するのは、「本人しか知らない」という点です。
チェックリストがあれば、こうしたトラブルは防げた可能性が高く、家族も安心して手続きを進められたでしょう。
3.デジタル遺品チェックリストの作り方
(1)なぜ作るのか
目的は「家族が困らないようにする」ことだけではありません。
チェックリストを作ることで、
- デジタル資産を“可視化”して、自分自身で管理する内容を知ることができる
- 不要なアカウントを整理して、不要なものはあらかじめ削除できる
- デジタル資産を家族に対してどうするのか、相続するのか、削除を依頼するのかを判断できる
このように生前整理の一環としての効果を得ることができます。
(2)作成手順
Step1.自分のアカウント・データをすべて書き出す
まず、スマホやPCで利用しているサービスをすべてリストアップします。
SNS、メール、ネット銀行、クラウド、通販サイト、サブスクなど、「お金に関係するもの」から「思い出に関係するもの」まで、分野別に整理します。
Step2.アカウントごとに必要情報を記録
以下の項目を表形式でまとめるのがおすすめです。
| 分類 | サービス名 | ログイン方法 | 扱い方の希望 |
|---|---|---|---|
| 金融 | ○○銀行ネット口座 | メール+パスワード | 家族に引き継ぎ |
| SNS | SNSログインID+パスワード | 削除希望 | |
| 思い出 | Google Photo | Googleアカウント | 共有希望 |
Step3.パスワードの扱いを決める
最も重要なのは「パスワードをどう残すか」。
単純にノートへ書き残すのは、生前に家族に見られるリスクがあります。
そうした心配がある人は、アカウント情報を死後にわたしてくれる終活アプリなどを利用するのがよいでしょう。
(3)作成後に得られる3つの安心
- 家族がスムーズに死後の手続きをすることができる
- SNSの長期放置による情報漏洩や悪用のリスクをなくせる
- 死後、自分の意向どおりの整理や引き継ぎが望める
つまりチェックリストは、“家族へのメッセージ”であり、“自分への安心の証明書”でもあるのです。
4.チェックリストの使用タイミングと活かし方
(1)いつ更新するのか
チェックリストは作って終わりではありません。
必要に応じて内容を更新する必要があります。
- アカウントを追加・削除したとき
- パスワードを変更したとき
- 新しいサービスを使い始めたとき
また、定期的にチェックリストの内容を見直すことで、無駄な契約・出費を整理することもできます。

(2)保管・共有の工夫
リストを家族に渡すタイミングは重要です。
特に夫婦間では重要で、夫婦問題が起きている時には利用される恐れがあります。
そうした可能性が納得済みであれば問題ありませんが、そうでない場合、家族のための共有が家族関係の悪化を引き起こしかねません。
リストをわたすタイミングは熟考する必要がありますが、結論まで長引くようではせっかくのチェックリストを作った意味がありません。
そういう場合は、死後にチェックリストをわたしてくれるサービスを利用するのも一つです。
まとめ
デジタル遺品の問題は、現代社会では誰にとっても避けられないテーマです。
ですが、「デジタル遺品のチェックリストを作る」という小さな一歩を踏み出すだけで、自分のデジタル資産を守ることができ、将来遭遇する家族の不安に対処できます。
今日から少しずつ、未来の安心を整えてみませんか?



