Dropboxで考える“デジタル終活”──残された家族が困らないために

Dropboxは、仕事やプライベートを問わず、世界中で利用されているオンラインストレージサービスです。

写真や書類、動画などを安全に保存し、スマートフォンやパソコン、タブレットなど複数の端末で共有できる便利な仕組みを提供しています。

しかし、利用者が亡くなったあと、このDropbox内のデータはどうなるのでしょうか。

アカウントの引き継ぎや削除は自動では行われません。

この記事では、Dropboxを終活の視点から見つめ直し、「生前に準備できること」「準備をしていなかった場合に家族が取るべき手順」を詳しく解説します。


Dropboxとは

Dropboxは、米国Dropbox社が提供するクラウドストレージサービスで、次のような特徴があります。

  • 端末のファイルを自動でクラウドにバックアップ
  • 複数の端末で常に最新状態を同期
  • リンクやフォルダ共有機能による他者との共有
  • ファイル履歴の復元(変更前に戻すことが可能)

無料プランと、容量拡大や履歴期間を確認できる有料プランがあります。


Dropboxを利用するメリット

① 安全なクラウド保存

Dropboxは高度な暗号化(AES-256bit)と二段階認証により、外部からの不正アクセスを防ぎます。
パソコンの故障やスマートフォンの紛失時でも、データが失われにくい点は大きな安心材料です。

② データの整理・共有が容易

家族写真や動画、重要書類などをフォルダごとに整理し、必要に応じて共有設定できます。
リンクを発行すれば、メールやLINEで簡単に共有が可能です。

③ 情報の更新がスムーズ

Dropboxに保存したファイルはいつでも上書き可能です。
紙のノートのように「書き直し」に手間がかからず、常に最新情報を保てます。


Dropboxの終活機能について

Dropboxには独自の終活機能というものはありません。

Dropboxが公式に案内している「故人アカウントへの対応」は、以下の手続きになります。

  • 死亡証明書(Death Certificate)の提出
  • 裁判所命令(Court Order)や遺言書など、法的な権限を示す文書
  • Dropboxへ申請するための正式な書類(英文)

ただし、これらを提出した場合でも、Dropboxがデータを開示する保証はありません。

つまり、遺族が故人のDropBoxを確実に見られるという仕組みはないのです。


Dropboxを利用する際のリスクと注意点

① 家族がアクセスできないリスク

Dropboxは個人専用のアカウント制です。
パスワードを知らない限り、たとえ家族でもログインできません。
事前共有がない場合、死亡後のデータアクセスは非常に困難になります。

② 支払い停止によるデータ削除

有料プランを利用している場合、口座凍結などで支払いが止まると自動的に無料プランへダウングレードされます。
容量超過分のデータが削除対象となり、一定期間経過後にはアカウント自体が削除されることもあります。
また、無料プランの場合も、長期間ログインがないと、削除される可能性があります。


終活をしていなかった場合、遺族が行う手続き

もし利用者がDropboxに何も準備を残さずに亡くなった場合、遺族は以下のような手順を踏む必要があります。

  1. 故人のデバイス・メールアカウントを確認する
    Dropboxアカウントに登録されているメールアドレスを特定します。
    スマホやPCのメールアプリ、ブラウザ履歴からDropBoxのログイン情報を探します。
  2. パスワードリセットの可否を確認
    メールアカウントが利用可能であれば、「パスワードを忘れた場合」から再設定を行い、アクセスできる可能性があります。
  3. アクセス不能な場合はDropboxサポートに申請
    Dropbox公式ヘルプにアクセスし、
    “Accessing a deceased person’s account” の項目からリクエストフォームを送信します。
    この際、死亡証明書や法的書類の英文コピーを添付する必要があります。
  4. 承認または却下の連絡を待つ
    Dropboxは個別審査の上、データ提供の可否を判断します。
    法的要件を満たしていない場合、データは開示されません

故人のパソコンやスマートフォンにDropboxの同期フォルダが残っている場合、そこに一部または全データが保存されている可能性があるので、確認してみましょう。


生前にできる対策

① フォルダ単位の共有設定

あらかじめ「家族共有フォルダ」を作成し、必要な情報のみを共有設定しておきましょう。
パスワード全体を渡さずとも、一部のデータだけを引き継ぐことが可能です。

② アカウント情報の安全な保管

Dropboxのログイン情報を紙に書いて保管したり、信頼できる家族に伝える方法を考えておきます。
死後に自動で渡る終活アプリを使うのも有効です。
死後に大事をわたせるアプリ


まとめ

Dropboxは、データの整理や安全な保管に優れたサービスですが、「利用者が亡くなったあと」の仕組みはまだ整備されていません。

生前に共有するデータを整理しておくことで、家族の負担を大幅に減らせます。

生前に見られたくないパスワードリストなどは終活アプリを使用することで死後にわたすことができます。

Dropboxをうまく活用して、大切な情報を遺す準備を始めてみてはいかがでしょうか。