「人生最後で最大の賭け」に、あなたは勝てるか? 映画のワンシーンから考えるデジタル時代の遺産相続
残された遺言や生命保険は、本当に大切な人の元へ届くのだろうか。
「人生最後で最大の賭け」
そう聞かれると、私たちはついつい自分のこれからの人生について考えてしまうのではないでしょうか。
考えた末に思い浮かぶ答えは、人それぞれ異なるでしょう。
しかし、現代を生きるすべての人にとって、人生最後の最大の賭けは、実は誰もが共通しています。
それは、「遺される家族に、生命保険金や銀行口座、そのほか自分にとって大切なすべての情報を、確実に残せるかどうか」という賭けです。
犬神家の一族と、古舘弁護士の現実
皆様は、『犬神家の一族』という有名なミステリー映画をご覧になったことがあるでしょうか。
劇中には、名探偵・金田一耕助を雇う犬神家お抱えの「古舘弁護士」という人物が登場します。
彼は犬神家の主が死亡すると、莫大な遺産相続を待つ遺族たちの前で、厳かに遺言状を開示します。
そして、そこから噴出する親族たちの凄まじい憎悪と悪意の渦の中で、孤軍奮闘することになります。
この印象的なシーンを見ていると、私たちは「弁護士という存在は、依頼主が死んだら自動的に遺族の元へ赴き、遺言状を開示してくれるものだ」と錯覚してしまいがちです。
しかし現実は、全く異なります。
多くの遺言状に関わる弁護士が、能動的に遺族に連絡を取ることはほとんどありません。
劇中で古舘弁護士が自ら動いたのは、犬神家が地域を揺るがす巨大な「財閥」であり、専任弁護士であったからかもしれません。
どちらにしろ、実際の実務においては、遺族の側から「連絡や申請」がない限り、弁護士が勝手に動くことはありません。
言い換えれば、もしも遺族がその弁護士の存在自体を知らなければ、せっかく作った遺言状は、永遠に開示されない可能性があるのです。
もっと身近な生命保険は・・・?
ではもっと身近な、相続をゆだねる「生命保険」はどうでしょうか?
家族のためにと、毎月コツコツと高い保険料を一生の多くを費やして支払う方もいるでしょう。
多くの方が生活費を切り詰めて保険料を捻出しています。
にもかかわらず、いざというとき、保険会社から連絡が届く制度にはなっていません。
日本の生命保険制度は、家族(受取人)からの申請があって初めて、請求の手続きが可能になる仕組みなのです。
かつてのアナログ時代、故人の部屋や引き出しを片付けていて、紙の保険証書を偶然見つける割合は非常に高いものでした。
見つけた遺族が「あ、ここに加入していたんだ」と気づき、保険会社へ連絡をいれる。これがこれまでの「暗黙の安心」でした。
しかし、あらゆる契約がデータ化された現代、保険の存在を遺族が最初から知らなければ、保険金は永遠に遺族の元に届かない可能性もあるのです。
デジタル遺品問題と「もう一つの賭け」
スマートフォンの画面がロックされ、銀行口座や生命保険などの資産に関する契約内容が一切わからない遺族の悲惨さは、現在「デジタル遺品問題」として世界中を騒がせています。
このとき、行き詰まった家族が取る一つの手段として「専門業者によるパスワード解析」をし、スマートフォンのロックを解除する方法があります。
しかしこれは、「賭けをもう一つ増やしている」とも言えます。
現在の高度なセキュリティに守られたスマートフォンの解析成功率は100%ではありません。
そしてスマートフォンの機種が新しくなるごとにどんどんセキュリティが強化され、比例して解析が困難になっています。
一方、料金体系の多くが解析結果までの所要時間により算出されるため、解析できずに何十万という請求だけが発生するケースも多発しています。
故人のスマートフォンをロック解除して資産を引き継げるか、あるいはロック解除に失敗したまま数十万円の支払いをするか、これは遺族にとっての大きな賭けといえるでしょう。
大切な家族へ資産を届けるための、人生最後で最大の賭け。
しかし、これは決して、運を天に任せるギャンブルではありません。
私たちには、事前に「準備」をしておくという、絶対的な必勝法が存在します。
万全の準備をあらかじめ整えておき、心残りなく旅立つか。それとも、人生最後で最大の賭けに挑んでみるか。あなたはどちらを選びますか?

